
形成・美容外科
Plastic,Reconstructive & Aesthetic Surgery
特 色
前橋赤十字病院形成外科は昭和56年に創設されました。これは群馬県内で初めての形成外科標榜でした。30年以上が経過しまして現在も群馬
県有数の形成外科学会認定医施設として、また地域医療支援病院として県内だけでなく県外からも様々な患者の紹介を受けております。
そこにおける治療内容としましては口唇口蓋裂をはじめとする先天異常から顔面骨骨折や熱傷などの外傷、良性・悪性の皮膚腫瘍、がんの治療に
ともなう再建、瘢痕ケロイド、眼瞼下垂、そして美容外科治療などの多岐に渡る疾患を対象に治療を行っております。
当 科で取り扱う主な疾患
形成外科は外科系診療科の中の一つの専門分野でありますが、他の科(眼科、耳鼻科、脳神経外科、消化器外科など)と違って特定の身体の場所
を対象にしていないため、よく分からないという方も多いと思います。
形成外科とは、基本的には外観に関わる疾患を対象にしております。そのため、顔の骨折、先天異常、がんによる体の組織の欠損な
ど様々な部位が対象となります。大事なことですが、整容面の改善を図るのはもちろんのこと、同時に機能面の改善も十分に考慮した治療を行なっ
ております。整容と機能を両立して改善することで、生活の質の向上に貢献してまいります。
また、形成外科は顕微鏡を用いた血管、神経、リンパ管などの吻合や、皮膚や筋肉を移動させる皮弁といった特殊技術を得意としており、様々な他
科の疾患の治療の一翼を担っております。
下記が当院における代表疾患となります。
熱
傷
当院では小さな熱傷から広範囲熱傷まで全てを治療することが出来ます。特に命に関わるような広範囲熱傷は、当院の高度救命救急セン ターによる全身管理のもと、協力して早期の手術治療を行っております。全身状態が落ち着いた後は一般病棟へ移り、リハビリや創のケア を行っていきます。また局所熱傷では、湿潤療法を用いた外来での保存的加療を基本に治療を行なっております。もし傷跡が残ってもその 後の醜状瘢痕までも考慮した治療を行っております。
顔
面外傷
顔面外傷におきましては、当院は日本全国で見ましてもトップクラスの治療件数を誇っております。複雑な骨折や精密な整復を要する眼 窩骨折においては、3Dプリンタにより立体モデルを作成し、手術前の綿密な計画を基に治療を行なっております。また当院は脳外科、眼 科、歯科、耳鼻科も揃っており各科との連携による一貫した治療を行っております。
口
唇口蓋裂
当院は開設以来非常に多くの口唇口蓋裂患者様の治療を担当しております。
口唇口蓋裂は胎児期の発生過程で、口唇、口蓋、顎堤(はぐき)に欠損による裂(割れ目)が残ってしまった疾患です。日本では500人
に1人程度の割合で生まれ、比較的頻度が高いです。症状としては見た目の問題、哺乳などの摂食障害、言語の問題、そして中耳炎や歯並
びの問題、顎の発育の問題が挙げられます。これら問題は疾患の程度によって異なり、また成長に応じた治療が必要となります。
口唇口蓋裂の治療はいろいろな科とのチーム医療が必要です。2009年4月より当院では『前橋赤十字病院口唇口蓋裂センター』を立ち
上げ、チーム医療として歯科口腔外科、言語聴覚士、小児科、産婦人科、耳鼻咽喉科、近隣の矯正歯科などの様々な関連科との連携をより
深めて治療を行なっております。
治療を行うことで多くの患者様は形態面でも機能面でも良い結果が得られております。患者様が健やかに成長,発育されるように全力で治
療に行なっております。
手
足、その他の先天異常
手足では、多指症や合指症などの治療を行なっております。手の機能を十分に考え
て、1歳前後よりそれぞれの患者様に応じた治療を行っております。
頭蓋骨早期癒合症は当院脳外科と協力し、集学的治療を行っております。
耳介の先天奇形においては、小耳症や埋没耳、副耳などがあり、適切な年齢を考慮して手術治療を行なっております。
症候群性疾患では、その疾患に応じて様々な症状を呈します。発達や成長、心臓などの臓器の合併症を考慮しながら、適切な治療の提案を
致します。
他には先天性眼瞼下垂や睫毛内反なども近隣や当院の眼科医との連携のもと治療を行っております。
頭
蓋顎顔面骨変形
頭蓋縫合早期癒合症、口唇口蓋裂による上顎低形成、クルーゾン病やアペール症候群などの症候群性先天異常、顎変形などの疾患では、 土台となる骨の変形や欠損を伴っております。これらの疾患の治療として、骨を切って理想とされる位置に移動して固定する骨格の形成術 が必要となることがあります。 骨格の変形は立体的な変形であり、三次元的な骨の移動を正確に行うためには手術前に綿密な計画が重要となります。また、脳や神経・血 管、眼などの重要な組織の損傷を防ぐこと、手術による傷がなるべく目立たなくなる形成外科的な配慮が重要です。 当院では3Dプリンター、顔面骨の手術に特化したシミュレーションソフトを用意しており、正確な手術プランのもとに手術を行なってお ります。また骨の近くにある重要な血管や神経の損傷を防ぐための超音波骨メスを備えております。安全で確実な手術治療の提供を心がけ ております。

悪性腫瘍とその再建
悪性腫瘍の切除による組織欠損に対して、「皮弁」という血流のある皮膚・皮下組織
や筋肉を移植する手術法で再建を行なっております。外観の修復、そして機能の維持を図ることを目的とします。
乳房再建では、当院は乳房オンコプラスティックサージェリー学会のエキスパンダー・インプラント再建の施設認定を受けており、乳腺外
科と連携して、人工物による再建はもちろんのこと、広背筋皮弁やマイクロサージャリーを用いた自家組織再建も積極的に行なっておりま
す。
リンパ浮腫
乳癌や婦人科癌などの手術後に起きる続発性リンパ浮腫や、誘因なく生じる原発性リ
ンパ浮腫に対する治療、またリンパ浮腫か疑わしい状態においての診断を行なっております。
浮腫を起こす原因はリンパ浮腫以外にも心原性、肝性、腎性、薬剤性、低アルブミン性、静脈性、廃用性など様々な要因が挙げられます。
当院ではまずリンパシンチグラフィーやエコー、CT等のモダリティを使用して、リンパシステムと血管の状態を把握し、診断を行いま
す。
リンパ浮腫治療の基本となるのはリンパドレナージや圧迫療法などの保存的療法ですが、当院では以前より「リンパ浮腫外来」として専任
の熟練セラピストによる保存的治療(自費診療)を行なっており、形成外科での診断の後に必要性と希望に応じて紹介しております。
外科的治療としては、マイクロサージャリー技術を駆使したリンパ管細静脈吻合やリンパ節移植などの手術療法を行なっております。保存
的治療とともに行うことで、保存的治療のみではなしえなかった患肢周径のさらなる減少、蜂窩織炎の減少をめざししております。
難治性疾患であり完治することは難しいですが、QOLの回復に全力を尽くして参り余す。
※リンパ浮腫以外の原因である場合、また当院通院が難しい場合などでは、他院や他科紹介もしくは紹介元での治療をお願いする可能性あ
ります。
顔面神経麻痺
腫瘍切除術や外傷、Bell麻痺やRamsay-Hunt症候群といったウイルス
感染などにより顔面神経麻痺を生じ、後遺症に悩む患者様を対象としております。
完全顔面神経麻痺では顔貌以外にも開閉瞼障害、笑う動作ができないなどの機能障害を認め、不全顔面神経麻痺では食事の際に目が閉じる
といった異常共同運動、頬部や口唇部の拘縮などの障害を認めており、当科では顔貌の改善、そして機能改善を目的として治療を行いま
す。
治療方法は、リハビリの指導、筋膜移植や眉毛挙上などの静的再建、筋肉移植・移行や神経移植・移行などの動的再建、ボトックス治療、
選択的神経切除、筋肉部分切除など挙げられ、患者様の要望や状態に応じて治療を選択いたします。
※Bell麻痺、Hunt症候群に対するステロイドや抗ウイルス薬投与などの急性期治療は当科では行なっておりません。
眼瞼下垂
高齢化に伴い増加している眼瞼下垂では、視野が狭まることで物が見えづらくなるだ けでなく、時に頭痛や肩こりなどの原因にもなります。また、手術治療では単にまぶたを開けるだけでなく自然な形態となるような美容外 科的側面の視点も必要です。当院ではきめ細かい配慮を込めて治療を行なっております。生まれつきの眼瞼下垂や、眼瞼痙攣にも対応して おります。
瘢痕、ケロイド
形成外科医にとっても傷跡を消すことは不可能ですが様々な方法を用いて出来るだけ 目立たない傷跡へと変化させることが出来ます。外傷後の傷跡だけでなく手術後の傷跡に関しても同様に治療を行っております。様々な治 療法がございますのでご相談ください。
乳房再建のご案内
乳房腫瘍で乳房切除を行う患者様に対し当科では乳腺外科と連携し乳房再建をおこなっています。
全国的に乳がん切除の再建はメジャーなものとなっていますが群馬県の再建率はまだまだ低いのが現状です。
現在では保険治療で乳房再建を行うことが可能です。
人工物(シリコンインプラント)を使用すると体への負担が少なく失われた乳房を再建することができます。自分の体の組織(背中やお腹)を使用
すると自分の乳房にあわせたオーダーメイドの乳房再建が可能です。また保険適応外となりますが脂肪注入による乳房再建もおこなっております。
患者様の希望やライフスタイル、胸の形態に合わせ最適な治療方法を提案いたします。
乳がんの手術を受けられた方、またこれから受ける方、どなたでもかまいません。
お気軽に形成・美容外科外来、または乳腺外科担当医までご相談ください。
お知らせ
- 難治性の特殊疾患にさらに対応するべく、2021年5月より第2、第4水曜日午前中に「顔面神経麻痺外来」と「リンパ浮腫外科外来」 を開設いたしました。
- 口唇口蓋裂の患児には、創部の安静を目的として手術後は円筒の装着を行なっております。
円筒の作り方を動画にいたしました。ぜひご参考ください。(音量注意)
ス タッフ紹介
名前 | 卒年 | 職名 | 専門分野 | 資格 |
---|---|---|---|---|
古賀 康史 | 2009年 | 部長 | 形成外科一般 |
日本形成外科学会専門医
日本創傷外科学会専門医
日本形成外科学会皮膚腫瘍外科分野指導医
日本形成外科学会小児形成外科分野指導医
医学博士
|
中嶋 ひかり | 2018年 | 医師 | ||
上原 拓也 | 2020年 | 専攻医 | ||
羽根 梨花 | 2021年 | 専攻医 | ||
竹原 唯梨 | 2020年 | 専攻医 |
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