
呼吸器外科
General Thoracic Surgery
特色
呼吸器外科の手術は大きな手術が多く,「手術となるとなかなか退院できない」,「仕事にも復帰できない」,「高齢で手術には耐えられない」,と思われがちです。しかし,体に対する負担を減らせる胸腔鏡下手術の普及により,当科のイメージは様変わり致しました。外来,病棟,リハビリ等多くのスタッフの方々の協力の下,早期離床・退院を目標に周術期管理に取り組んでおります。さらに手術時間や麻酔時間を短縮し,臥床期間を短くすることによって,術後合併症も少なくなってきています。最近では80才以上のお年を召した方の手術も珍しくありません(最高齢103歳)。
当院では,肺がん(気道腫瘍も含める)を中心に,自然気胸,縦隔・胸壁・胸膜疾患など,多彩な疾患を扱っています。1998年~2024年までの総手術件数は6778件となっています。
当院は呼吸器外科専門医基幹施設,日本胸部外科学会指定施設,外科専門医基幹施設となっています。

当科の特色
昔の肺がん手術では,10~30cmくらい皮膚を切って胸にある筋肉と肋骨を切る必要がありました(開胸手術)。しかし当科では,20年以上前から,早期の肺がんに対して小さな「きず」で,肋骨を切らないで手術を行っています(胸腔鏡手術)。この方法で手術をすれば痛みは軽く,早ければ手術後数日程度で退院することも可能です。これにより患者さんに対する痛みなどの負担を最小限にしながら,従来の開胸手術と同程度の治療成績を出しています。ただし,きずは小さくても胸の中では開胸手術と同じことをしているので,手術の難易度は高くなります。従って胸腔鏡手術は経験豊かな外科医が行う必要があります。さらに重要なことですが,「小さなきず」が目標ではなく,がんをきちんと取り除いて安全に手術を行うことが最終目標です。
(ダビンチ手術件数 2022年37件,2023年94件,2024年139件)
ダビンチを使用することにより,従来の胸腔鏡手術では不可能だった術者の細かい手先の動きを再現することが可能となり,精密かつ丁寧な手術を行えるようになりました。また術者が操作して10倍まで拡大視して高解像度な3次元画像を見ながら,精細かつ正確な操作により出血量も少なくできます。さらにダビンチ専用の内視鏡や鉗子を使用し,肋間神経に負荷をかけないようにロボットアームが作動するため,術後の創部痛が少なくなります(個人差あり)。
以前より当科では,肺がんに対して難易度の高い肺機能温存手術(気管・気管支形成術)を心がけています。肺がんの手術で は,原則として腫瘍の存在する肺葉(右に3つ,左に2つある肺の「単位」)をまるごと切除しますが,腫瘍が肺の付け根に近い 場合あるいは太い気管支にまで病変が及んでいる場合,隣り合っている肺葉あるいは片側の肺を全て摘出しなければならない時が あります。このような場合に,病変の及んでいる気管支をいったん切り離した後,正常な気管支どうしをつなぎ合わせ,健常な肺 を残すことができます。これを「気管・気管支形成術」 と呼び,当科で1998年~2024年に行った気管・気管支形成術は119件で,そのうち悪性腫瘍(がん)に対するものは111件でした。
手術の前に3次元CTによるシミュレーション画像を作成して,安全かつ手術時間・出血量を最小限度にして,手術をより安全に行って おります。
呼吸器外科の手術を受ける方に対しては,呼吸器外科外来・病棟,歯科口腔外科,リハビリテーション科のスタッフのご協力の 下に,術後合併症を最小限にとどめ,安全に手術を行っています。さらにハイリスク(他にも持病のある方)患者さんに対して は,当院の中で各診療科専門医に受診してもらいお体の状態をチェックしてから手術を行い,手術後は病棟及び集中治療室スタッ フのご協力の下に診療を行っています。
総勢17人の常勤医師(呼吸器外科,呼吸器内科,放射線治療科,放射線診断科,病理診断科)と,その他に研修医等がかかわりなが ら,チーム医療を行っております。そして週数回スタッフが集まり,患者ごとに治療方針を検討しています。それにより適切な治療計画を立て,年間300件以上の手術を行っています。
手 術件数及び治療成績
(過去3年間: 2022年342件,2023年313件,2024年301件)

スタッフ紹介
名前 | 卒年 | 職名 | 専門分野 | 資格 |
---|---|---|---|---|
上吉原 光宏 |
1991年 | 副院長兼部長 | 呼吸器外科一般・胸部画像診断・肺癌診断・治療、気管支鏡診断 |
日本外科学会指導医
日本外科学会専門医
日本呼吸器外科学会指導医
日本呼吸器外科学会専門医
日本救急医学会専門医
日本胸部外科学会指導医
日本胸部外科学会認定医
日本プライマリ・ケア連合学会認定医
日本医師会認定産業医
肺がんCT検診認定医
医学博士
前橋市医師会理事
|
井貝 仁 |
2002年 | 部長 | 肺がん、呼吸器外科一般 |
日本がん治療認定医機構がん治療認定医
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
欧州心臓胸部外科学会(EACTS active member)
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
欧州心臓胸部外科学会(EACTS active
member)
欧州胸部外科学会(ESTS active member)
Mini-invasive Surgery Youth Editorial Board
Journal of Thoracic Disease Editorial Board
Video-Assisted Thoracic Surgery Associate Editors-in-Chief
AME Surgical Journal Editorial Board
Journal of Visnalized Surgery,Editorial Board
単孔式胸腔鏡手術研究会常任理事
日本気胸・嚢胞性肺疾患学会学術委員
日本気胸・嚢胞性肺疾患学会評議員
日本呼吸器外科学会ロボット支援手術プロクター
日本呼吸器外科学会専門医
日本呼吸器外科学会評議員
日本外科学会専門医
日本外科学会指導医
臨床研修指導医
医学博士
|
八巻 英 |
2002年 | 副部長 |
日本外科学会 外科専門医
日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本気管食道科学会 気管食道専門医
肺がんCT検診認定機構 認定医
緩和ケア研修会修了
身体障害者福祉法 指定医
難病指定医
臨床研修指導医
医学博士
|
|
新居 和人 |
2005年 | 副部長 |
胸腔鏡安全技術認定医
日本外科学会専門医
日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医
日本がん治療認定医機構認定医
肺がんCT検診認定医
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|
井田 晃頌 |
2019年 | 医師 | 呼吸器外科一般 |
日本外科学会専門医
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(2025年1月 文責:上吉原)