呼吸器外科
General Thoracic Surgery

特色

呼吸器外科の手術は大きな手術が多く,「手術となるとなかなか退院できない」,「仕事にも復帰できない」,「高齢で手術には耐えられない」,と思われがちです.しかし,体に対する負担を減らせる胸腔鏡下手術の普及により,当科のイメージは様変わり致しました.外来,病棟,リハビリ等多くのスタッフの方々の協力の下,早期離床・退院を目標に周術期管理に取り組んでおります.さらに手術時間や麻酔時間を短縮し,臥床期間を短くすることによって,術後合併症も少なくなってきています.最近では80才以上のお年を召した方の手術も珍しくありません(最高齢98歳).
当院では,肺がん(気道腫瘍も含める)を中心に,自然気胸,縦隔・胸壁・胸膜疾患,気道狭窄,胸部外傷など,多彩な疾患を扱っています.1998年~2019年までの総手術件数は5061件となっています.
当院は呼吸器外科専門医基幹施設,日本胸部外科学会指定施設,外科専門医基幹施設となっています.

当科の特色

a 肺がんについて

わが国では,死因の第1位は悪性新生物でありますが,全がん死亡例中では肺がんの増加は特に著しく,男性では1993年に胃がんを抜いて第1位になり,女性では2007年に大腸がんについで第2位となっています.さらに,2008年厚生省人口動態統計によると,肺がんの男女合わせた死亡者数が66847人となっており,がん死亡の第1位となっています.肺がんの治療はいかに早く確実に診断し(呼吸器内科による気管支鏡検査,放射線科によるCTガイド下肺針生検など),的確な治療方針(手術・抗がん剤治療・放射線治療など)をたてることが大事です.

肺癌登録合同委員会 第 7 次事業:2010 年肺癌手術症例の全国登録調査

原発性肺癌は本邦における死因の第 1 位であり、日本国民の健康福祉の向上のために治 療成績の向上が求められています。原発性肺癌の治療には外科治療、抗癌化学療法、分子 標的療法、放射線療法がありますが、根治のためには外科治療が必須です。外科治療の成 績の更なる向上のためには、大規模なデータベースによる治療成績の把握により、外科治 療の適応や術式の妥当性が検討される必要があります。 日本肺癌学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内視鏡学会の 4 学会 が合同で運営する肺癌登録合同委員会は、日本の肺癌診療の診療成績を把握するため、定 期的に全国の施設に協力を求めて、大規模データベースを構築してきました。肺癌登録合 同委員会は、今回、第 7 次事業として 2010 年の原発性肺癌外科治療症例の後ろ向き登録を 開始することになりました。登録症例の解析結果をもとに、最新の肺癌治療成績を把握し、 今後の肺癌診療に活かしていく予定です。また当事業の症例データベースは世界肺癌学会 の国際データベース事業とも共同して、国際対癌連合(Union internationale contre le cancerあるいは The Union for International Cancer Control、略してUICC)による TNM 分類の改定にも貢献する予定です。 当院は、2010 年に付属病院で肺癌に対する外科治療を受けられた患者さんの診療情報を 肺癌登録合同委員会 第 7 次事業に登録し、全国および国際共同研究に貢献する予定です。 研究計画書は、事務局である大阪大学 呼吸器外科学のホームページにも掲載されていま すので、必要な場合はご確認ください。 個人情報の管理は厳重にしておりますので、ご理解お願いします。 ただし事業と研究への参加を拒否される場合はご連絡ください。拒否の申し出のある患 者さんの診療情報の登録は致しません。 ご協力よろしくお願いいたします。

b 胸腔鏡を使用した肺がん根治手術(肺葉切除リンパ節郭清術)

昔の肺がん手術では,10~30 cmくらい皮膚を切って胸にある筋肉と肋骨を切る必要がありました(開胸手術).しかし当科では,早期の肺がんに対しては胸腔鏡を用いることによって2~3cm程度のきず(肺の取り出し口)と1~2cm程度のきず(胸腔鏡を入れる部分)を2ヵ所をつけるのみで,筋肉や肋骨を切らないで手術を行っています(1998年より徐々に導入開始).この方法で手術をすれば痛みは軽く,早ければ手術後3~5日程度で退院することも可能です.これにより患者さんに対する痛みなどの負担を最小限にしながら,従来の開胸手術と同程度の治療成績を出しています.


c 気管・気管支形成術

以前より当科では,肺がんに対して難易度の高い肺機能温存手術(気管・気管支形成術)を心がけています.肺がんの手術では,原則として腫瘍の存在する肺葉(右に3つ,左に2つある肺の「単位」)をまるごと切除しますが,腫瘍が肺の付け根に近い場合あるいは太い気管支にまで病変が及んでいる場合,隣り合っている肺葉あるいは片側の肺を全てを切除しなければならない時があります.このような場合に,病変の及んでいる気管支をいったん切り離した後,正常な気管支どうしをつなぎ合わせ,健常な肺を残すことができます.これを「気管・気管支形成術」と呼び,当科で1998年6月~2019年12月に行った気管・気管支形成術は88件で,そのうち悪性腫瘍(がん)に対するものは80件でした.片肺全摘はわずかに8件程度となっています.


d 診療体制

総勢18人の常勤医師(呼吸器外科,呼吸器内科,放射線治療科,放射線診断科,病理診断科)と,その他に研修医等がかかわりながら,チーム医療を行っております.そして週1回全員が集まり,患者ごとに治療方針を検討しています(呼吸器カンファレンス).それにより適切な治療計画を立て,年間400件近くの手術を行っています.さらに常勤病理医による術中迅速病理診断も行い(病理診断専門医による,がんの確定診断,リンパ節転移の有無,切除した組織の縁(ふち)にがん細胞が残っていないかを15~30分程度で判定する技術),手術の精度をより確実にしています.


e 手術に対する医療安全管理

呼吸器外科の手術を受ける方に対しては,呼吸器外科外来・病棟,歯科口腔外科,リハビリテーション科のスタッフのご協力の下に,術後合併症を最小限にとどめ,安全に手術を行っています.さらにハイリスク(他にも持病のある方)患者さんに対しては,当院の中で各診療科専門医に受診してもらいお体の状態をチェックしてから手術を行い,手術後は病棟及び集中治療室スタッフのご協力の下に診療を行っています.

手術件数及び治療成績

a 総手術件数:4632件(1998年6月~2019年12月)
2017 2018 2019
件数 374 405 426

(過去3年間:2019年426件,2018年405件,2017年374件)

b 肺悪性腫瘍(肺がん)に対する手術件数:1775件(1998年6月~2019年12月)
c 自然気胸手術件数:1143件(1998年6月~2019年12月)

※胸腔鏡下手術における再発率(術後1年以内を再発とみなす)
1.3%(2004年9月~2019年12月・・・1143件中15件)

スタッフ紹介

名前 卒年 職名 専門分野 資格

上吉原 光宏

1991年 部長 呼吸器外科一般・胸部画像診断・肺癌診断・治療、気管支鏡診断
米国胸部外科学会(STS, International Member)
日本呼吸器外科学会(専門医・指導医)
日本胸部外科学会(認定医・指導医)
日本外科学会(専門医・指導医)
日本がん治療認定医機構(認定医・暫定教育医)
日本救急医学会専門医
日本医師会認定産業医
診療情報管理士
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
日本プライマリ・ケア認定医
難病指定医
日本脳神経血管内治療学会専門医 
臨床研修指導医
医学博士

井貝 仁

2002年 副部長 肺がん、呼吸器外科一般
日本呼吸器外科学会専門医
日本外科学会専門医
日本がん治療認定医機構認定医
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
欧州心臓胸部外科学会(EACTS active member)
欧州胸部外科学会(ESTS active member)
臨床研修指導医
医学博士

松浦 奈都美

2003年 医師 呼吸器外科一般
日本呼吸器外科学会専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本がん治療認定医機構認定医
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
医学博士

大沢 郁

2012年 医師 呼吸器外科一般
日本外科学会専門医

矢澤 友弘

2012年 医師 肺がん、呼吸器外科一般
米国臨床腫瘍学会(Full member)
日本がん治療認定医機構認定医
日本外科学会専門医
臨床研修指導医
医学博士

研究活動

当科では最適かつ最新の治療を提供できるよう積極的な研究活動を行っており、海外や国内で多くの学会発表を行っています。以下に代表的な研究成果を掲載いたします。

国際学会発表(2019年のみ掲載)
  1. Uniportal thoracoscopic surgery can serve as a standard approach for treatment of primary spontaneous pneumothorax. 日本.
  2. Algorithm based troubleshooting for bleeding during thoracoscopic anatomic pulmonary resections. アメリカ.
  3. Uniportal thoracoscopic surgery is a standard approach for primary spontaneous pneumothorax. アメリカ.
  4. Performing a thoracoscopic right upper lobectomy after an initial anatomic pulmonary resection of the lower lobe. アイルランド.
  5. Wedge resection as an alternative procedure for primary pulmonary carcinoma in poor-risk patients. インド.
  6. Endoscopic transthoracic sympathectomy is a useful option for severe intractable angina and catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia. ブルガリア.
全国学会発表(2019年のみ掲載)
  1. 若年男性自然気胸に対する胸腔鏡手術におけるベストアプローチの検討 -Uniportal vs Transareolar.横浜.
  2. 続発性自然気胸における術後遷延性肺瘻に関する検討.横浜.
  3. 当科における単孔式胸腔鏡下解剖学的肺切除の周術期成績.大阪.
  4. 当科のCompletion lobectomy における手術戦略.大阪.
  5. 高齢者に対する肺癌治療.大阪.
  6. 低侵襲手術としての単孔式胸腔鏡下肺区域切除のコツ.大阪.
  7. 消極的縮小手術(非解剖学的肺切除)を行った原発性非小細胞肺癌の治療成績.大阪.
  8. 当院における隣接臓器合併切除を要する肺癌手術症例の検討.大阪.
  9. Usefulness of thoracoscopic fissureless lobectomy for dense fissures as minimally invasive surgery.大阪.
  10. 外傷性肺嚢胞との鑑別が困難であった若年性肺腺癌の一例.大阪.
  11. 当科における糖尿病合併肺癌に対する周術期血糖管理とその治療成績.大阪.
  12. 自然気胸手術における経乳輪アプローチの有用性.大阪.
  13. 当院における肺膿瘍の治療戦略―外科治療介入の意義―.大阪.
  14. 当科における肋骨骨折に伴う横隔膜損傷が原因となった遅発性大量血胸の治療経験.大阪.
  15. 胸部外傷に対する肺葉切除のKnacks and Pitfalls.大阪.
  16. 原発性非小細胞肺癌に対する消極的縮小手術(楔状切除)の治療成績.大阪.
  17. 胸腔鏡下非定型肺区域切除術の安全性と忍容性.京都.
  18. 続発性自然気胸における術後遷延性肺瘻に関する検討.京都.
  19. 解剖学的肺切除後同側再解剖学的肺切除症例に対する手術戦略~パターン化に基づいた採用手技の決定~.大阪.
  20. 原発性非小細胞肺癌に対する消極的縮小手術(非解剖学的切除)の意義.大阪.
  21. 当院における肺がん地域連携パスの検討:抗癌剤投与患者での情報共有の工夫.広島.
  22. 肺がん地域連携パスを実施する際の工夫:抗癌剤投与患者における情報共有.高知.
  23. 消極的縮小手術(非解剖学的肺切除)を行った原発性非小細胞肺癌の治療成績.大阪.
  24. 当科における外傷外科トレーニングについて~wet lab training と一般胸部外科手術手技の応用~.大阪.
  25. Optimal evaluation and selection of geriatric operable lung cancer patients. 大阪.
  26. Algorithm-based troubleshooting for bleeding during thoracoscopic pulmonary resections. 大阪.
  27. 他診療科とのチーム医療連携〜鏡視下⼿術の⼯夫・マネジメント.金沢.
医学論文(主要な論文のみ掲載)
  1. Immunoglobulin G4-related disease association with an isolated anterior mediastinal tumor. Ann Thorac Surg. 2019
  2. The risk of misdiagnosing pulmonary adenocarcinoma as traumatic pseudocyst in a young adult. Ann Thorac Surg. 2019
  3. The safety and feasibility of thoracoscopic uncommon pulmonary segmentectomy. J Thorac Dis. 2019
  4. Advantages associated with the use of a wound retractor compared to a rigid trocar inserted via the camera port during video-assisted thoracic surgery. J Thorac Dis. 2019
  5. The risk of misdiagnosing pulmonary adenocarcinoma as traumatic pseudocyst in a young adult. Ann Thorac Surg. 2018
  6. Synchronous Pulmonary Adenocarcinoma and Lymph Node Small Cell Carcinoma of Unknown Primary Origin. J Thorac Oncol. 2018
  7. Invited editorial on "Fissureless fissure-last video-assisted thoracoscopic lobectomy for all lung lobes: a better alternative to decrease the incidence of prolonged air leak?" J Thorac Dis. 2018
  8. Three-dimensional computed tomography helps identify muscles for use in an empyema cavity. Ann Thorac Surg. 2017
  9. Thoracoscopic right upper lobectomy after an initial anatomic pulmonary resection of the lower lobe. Multimed Man Cardiothorac Surg. 2017.
  10. A convenient method for identifying a small pulmonary nodule using a dyed swab and geometric mapping. J Thorac Dis. 2016
  11. Successful treatment of a bronchopleural fistula after en masse lobectomy. J Thorac Dis. 2016
  12. Pulmonary sequestration combined with an aberrant right subclavian artery. Ann Thorac Surg. 2013
  13. Anatomical segmentectomy for pneumothorax associated with congenital bronchial atresia. Eur J Cardiothorac Surg. 2013
  14. Concerning en masse lobectomy. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012
  15. Is a bronchopleural fistula a contraindication to pleurodesis? Ann Thorac Surg. Ann Thorac Surg. 2012
  16. Salvage surgery for local recurrence after carbon ion radiotherapy for patients with lung cancer. Eur J Cardiovasc Surg. 2015
  17. A useful technique for specimen extraction from the thorax: the vacuum-packing method. Eur J Cardiothorac Surg. 2012
  18. The indications for uniportal video-assisted thoracic surgery. Ann Thorac Surg. 2012
  19. The selected segmental inflation technique for pulmonary segmentectomy: Pros and cons. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012
  20. A simple, new technique for identifying the cut line in the bronchus in bronchoplasty using a butterfly needle. Eur J Cardiothorac Surg. 2011
  21. Difference in outcome in the transection of the pulmonary artery and vein. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011
  22. Three-dimensional imaging of an anomalous systemic artery supplying normal lung. Ann Thorac Surg. 2010
  23. Serial chest films are needed after a diagnosis of pneumopericardium because of risk of cardiac herniation. Ann Thorac Surg. 2010
  24. What is standard treatment for bronchopleural fistulas? Ann Thorac Surg. 2010
  25. Membranous tracheoplasty using an azygous vein pedicle graft with roundabout-field intubation: a novel surgical technique. J Thorac Cardiovasc Surg. 2009
  26. The blurred border between thoracoscopic surgery and thoracotomy. Ann Thorac Surg. 2009
  27. Chilaiditi’s sign mimicking a traumatic diaphragmatic hernia. Ann Thorac Surg. 2009
  28. Does the electric scalpel facilitate bronchial tissue damage? Eur J Cardiothorac Surg. 2008
  29. Atypical bronchoplasty to preserve the lung parenchyma: the bronchofolding technique. J Thorac Cardiovasc Surg. 2008
  30. Pleural metastases from renal cell carcinoma 16 years after resection. J Clin Oncol. 2007
  31. Convenient and improved method to distinguish the intersegmental plane in pulmonary segmentectomy using a butterfly needle. Ann Thorac Surg. 2007
  32. Blunt traumatic injury of the azygous vein diagnosed by computed tomography. Eur J Cardiothorac Surg. 2007
  33. Spontaneous mediastinal hematoma presenting as a mass. J Thorac Oncol 2007
  34. Does an incomplete interlobar fissure influence survival or recurrence in resected non-small-cell lung cancer? Lung Cancer. 1999
  35. Resection of pulmonary metastases in six patients with disease-free interval greater than 10 years. Ann Thorac Surg. 1998

(2020年1月7日 文責:上吉原)

外来スケジュール

 
午前 上吉原 光宏
(再診)
松浦 奈津美
(再診)
上吉原 光宏
(再診)
井貝 仁
(初診・再診)
(第2・4週)
松浦 奈都美
(再診)
(第2・4週)
急患診察のみ 井貝 仁
(再診)
上吉原 光宏
(初診)
井貝 仁
(初診・再診)
午後 上吉原 光宏
(初診・再診)
急患診察のみ 急患診察のみ 矢澤 友弘(再診) 急患診察のみ

臨時休診日


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