呼吸器外科
General Thoracic Surgery

呼吸器外科の手術は大きな手術が多く「手術となるとなかなか退院できない」「仕事にも復帰できない」「高齢で手術には耐えられない」と思われがちです。しかし、体に対する負担を減らせる胸腔鏡下手術の普及により、当科のイメージは様変わり致しました。外来、病棟、リハビリ等多くのスタッフの方々の協力の下、早期離床・退院を目標に周術期管理に取り組んでおります。さらに手術時間や麻酔時間を短縮し、臥床期間を短くすることによって、術後合併症も少なくなってきています。最近では80才以上のお年を召した方の手術も珍しくありません(最高齢98歳)。
当院では、肺がん(気道腫瘍も含める)を中心に、自然気胸、縦隔・胸壁・胸膜疾患、気道狭窄、胸部外傷など、多彩な疾患を扱っています。1998年6月~2017年12月までの総手術件数は4230件となっています.
当院は呼吸器外科専門医基幹施設、日本胸部外科学会指定施設、外科専門医基幹施設となっています。 外来診療に関しては、月(午前・午後)、火(午前)、木(午後)、金(午前)曜日に行っています。

特色

a 肺がんについて

わが国では,死因の第1位は悪性新生物でありますが,全がん死亡例中では肺がんの増加は特に著しく,男性では1993年に胃がんを抜いて第1位になり,女性では2007年に大腸がんについで第2位となっています.さらに,2008年厚生省人口動態統計によると,肺がんの男女合わせた死亡者数が66847人となっており,がん死亡の第1位となっています.肺がんの治療はいかに早く確実に診断し(呼吸器内科による気管支鏡検査,放射線科によるCTガイド下肺針生検など),的確な治療方針(手術・抗がん剤治療・放射線治療など)をたてることが大事です.

肺癌登録合同委員会 第 7 次事業:2010 年肺癌手術症例の全国登録調査

原発性肺癌は本邦における死因の第 1 位であり、日本国民の健康福祉の向上のために治 療成績の向上が求められています。原発性肺癌の治療には外科治療、抗癌化学療法、分子 標的療法、放射線療法がありますが、根治のためには外科治療が必須です。外科治療の成 績の更なる向上のためには、大規模なデータベースによる治療成績の把握により、外科治 療の適応や術式の妥当性が検討される必要があります。 日本肺癌学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器外科学会、日本呼吸器内視鏡学会の 4 学会 が合同で運営する肺癌登録合同委員会は、日本の肺癌診療の診療成績を把握するため、定 期的に全国の施設に協力を求めて、大規模データベースを構築してきました。肺癌登録合 同委員会は、今回、第 7 次事業として 2010 年の原発性肺癌外科治療症例の後ろ向き登録を 開始することになりました。登録症例の解析結果をもとに、最新の肺癌治療成績を把握し、 今後の肺癌診療に活かしていく予定です。また当事業の症例データベースは世界肺癌学会 の国際データベース事業とも共同して、国際対癌連合(Union internationale contre le cancerあるいは The Union for International Cancer Control、略してUICC)による TNM 分類の改定にも貢献する予定です。 当院は、2010 年に付属病院で肺癌に対する外科治療を受けられた患者さんの診療情報を 肺癌登録合同委員会 第 7 次事業に登録し、全国および国際共同研究に貢献する予定です。 研究計画書は、事務局である大阪大学 呼吸器外科学のホームページにも掲載されていま すので、必要な場合はご確認ください。 個人情報の管理は厳重にしておりますので、ご理解お願いします。 ただし事業と研究への参加を拒否される場合はご連絡ください。拒否の申し出のある患 者さんの診療情報の登録は致しません。 ご協力よろしくお願いいたします。

b 胸腔鏡を使用した肺がん根治手術(肺葉切除リンパ節郭清術)

昔の肺がん手術では,10~30 cmくらい皮膚を切って胸にある筋肉と肋骨を切る必要がありました(開胸手術).しかし当科では,早期の肺がんに対しては胸腔鏡を用いることによって2~3cm程度のきず(肺の取り出し口)と1~2cm程度のきず(胸腔鏡を入れる部分)を2ヵ所をつけるのみで,筋肉や肋骨を切らないで手術を行っています(1998年より徐々に導入開始).この方法で手術をすれば痛みは軽く,早ければ手術後3~5日程度で退院することも可能です.これにより患者さんに対する痛みなどの負担を最小限にしながら,従来の開胸手術と同程度の治療成績を出しています.


c 気管・気管支形成術

以前より当科では,肺がんに対して難易度の高い肺機能温存手術(気管・気管支形成術)を心がけています.肺がんの手術では,原則として腫瘍の存在する肺葉(右に3つ,左に2つある肺の「単位」)をまるごと切除しますが,腫瘍が肺の付け根に近い場合あるいは太い気管支にまで病変が及んでいる場合,隣り合っている肺葉あるいは片側の肺を全てを切除しなければならない時があります.このような場合に,病変の及んでいる気管支をいったん切り離した後,正常な気管支どうしをつなぎ合わせ,健常な肺を残すことができます.これを「気管・気管支形成術」と呼び,当科で1998年6月~2017年12月に行った気管・気管支形成術は77件で,そのうち肺がんに対するものは69件でした.片肺全摘はわずかに8件程度となっています.


d 診療体制

総勢17人の常勤医師(呼吸器外科,呼吸器内科,放射線治療科,放射線診断科,病理診断科)と,その他に研修医等がかかわりながら,チーム医療を行っております.そして週1回全員が集まり,患者ごとに治療方針を検討しています(呼吸器カンファレンス).それにより適切な治療計画を立て,年間400件近くの手術を行っています.さらに常勤病理医による術中迅速病理診断も行い(病理診断専門医による,がんの確定診断,リンパ節転移の有無,切除した組織の縁(ふち)にがん細胞が残っていないかを15~30分程度で判定する技術),手術の精度をより確実にしています.


e 手術に対する医療安全管理

呼吸器外科の手術を受ける方に対しては,呼吸器外科外来・病棟,歯科口腔外科,リハビリテーション科のスタッフのご協力の下に,術後合併症を最小限にとどめ,安全に手術を行っています.さらにハイリスク(他にも持病のある方)患者さんに対しては,当院の中で各診療科専門医に受診してもらいお体の状態をチェックしてから手術を行い,手術後は病棟及び集中治療室スタッフのご協力の下に診療を行っています.

手術件数及び治療成績

a 総手術件数:4230件(1998年6月~2017年12月)
2015 2016 2017
件数 386 371 374
b 肺悪性腫瘍(肺がん)に対する手術件数:1455件(1998年6月~2017年12月)
c 自然気胸手術件数:989件(1998年6月~2017年12月)

※胸腔鏡下手術における再発率(術後1年以内を再発とみなす)
1.6%(2004年9月~2017年12月・・・945件中15件)

d 予定として行った手術における死亡件数(1998年6月~2017年12月・・・3898件)

※手術直接死亡(術後48時間以内の死亡) 0件(0%)
※在院死亡(術後退院できずに死亡) 19件(0.5%)

スタッフ紹介

名前 卒年 職名 専門分野 資格

上吉原 光宏

1991年 部長 呼吸器外科一般・胸部画像診断・肺癌診断・治療、気管支鏡診断
米国胸部外科学会(STS, International Member)
日本呼吸器外科学会(専門医・指導医)
日本胸部外科学会(認定医・指導医)
日本外科学会(専門医・指導医)
日本がん治療認定医機構(認定医・暫定教育医)
The International Society for Minimally Invasive Cardiothoracic Surgery  (International member)
日本救急医学会専門医
日本医師会認定産業医
診療情報管理士
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
日本プライマリ・ケア認定医
臨床研修指導医

井貝 仁

2002年 副部長 肺がん、呼吸器外科一般
日本呼吸器外科学会専門医
日本外科学会専門医
日本がん治療認定医機構認定医
肺がんCT検診認定機構CT検診認定医
欧州心臓胸部外科学会(EACTS active member)
欧州胸部外科学会(ESTS active member)
臨床研修指導医

大沢 郁

2012年 医師 呼吸器外科・外科

矢澤 友弘

2012年 医師

吉川 良平

2014年 専攻医 呼吸器外科一般  

研究活動

当科では最適かつ最新の治療を提供できるよう積極的な研究活動を行っており、海外や国内で多くの学会発表を行っています。以下に代表的な研究成果を掲載いたします。

国際学会発表(2017年のみ掲載)
  1. Strategy for thoracoscopic surgery in patients having difficulty with one-lung ventilation. The International Society for Minimally Invasive Cardiothoracic Surgery 2017 Annual Scientific Meeting. イタリア
  2. Thoracoscopic extended thymothymectomy for myasthenia gravis and thymic malignancies: a bilateral minimally invasive approach. The International Society for Minimally Invasive Cardiothoracic Surgery 2017 Annual Scientific Meeting. イタリア
  3. Endoscopic transthoracic sympathectomy is a safe and useful option for severe intractable angina and catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia. 12th International Symposium on Sympathetic Surgery. 福岡
  4. Endoscopic transthoracic sympathectomy is a safe and useful option for severe intractable angina and catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia. The 27th Annual Meeting of the Asian Society for Cardiovascular and Thoracic Surgery. 韓国
  5. Strategy for oncologic emergency in thoracic disease. The IASLC 18th World Conference on Lung Cancer. 横浜
  6. Recurrence within a year after complete resection of primary lung cancer. The IASLC 18th World Conference on Lung Cancer. 横浜
  7. The efficacy of thoracoscopic right upper lobectomy using fissureless technique in patients with dense fissures. The IASLC 18th World Conference on Lung Cancer. 横浜
  8. Clinicopathological study of 16 cases with pulmonary pleomorphic carcinoma. The IASLC 18th World Conference on Lung Cancer. 横浜
  9. Performing a thoracoscopic right upper lobectomy after an initial anatomic pulmonary resection of the lower lobe. 25th Meeting of the European Society of Thoracic Surgeons. オーストリア
  10. A Simple, Reliable Tracheocutaneous Fistula Procedure Using a Hinged Skin Flap. The 27th Annual Meeting of the Asian Society for Cardiovascular and Thoracic Surgery. 韓国
  11. Surgical Strategy for Empyema with Bronchopleural Fistula. The 27th Annual Meeting of the Asian Society for Cardiovascular and Thoracic Surgery. 韓国
  12. Clinical Benefit of F18-Fluorodeoxyglucose Uptake on Positron Emission Tomography: Imaging of Thymic Epithelial Tumors. The 27th Annual Meeting of the Asian Society for Cardiovascular and Thoracic Surgery. 韓国
全国学会発表(2017年のみ掲載)
  1. 肺悪性腫瘍手術における合併症予防のための医科歯科連携.第42回日本外科系連合学会学術集会.徳島
  2. アスペルギローマを有する空洞破裂によって発症した続発性気胸の1手術例.第21回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会.久留米
  3. 単孔式完全胸腔鏡下解剖学的肺切除の検討:3ポートとの比較.9th Reduced Port Surgery Forum 2017 in Oita.第11回単孔式内視鏡手術研究会.大分
  4. 単孔式完全鏡視下S6区域切除.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  5. Fissureless technique を用いたVATS 右上葉切除の有用性.第30回日本内視鏡外科学会総会.京都
  6. 当科における単孔式胸腔鏡手術の周術期結果・再発率についての検討.第30回日本内視鏡外科学会総会.京都
  7. 胸腔鏡を用いて経大動脈的左室内血栓除去術を施行した1 例.第30回日本内視鏡外科学会総会.京都
  8. 肺原発滑膜肉腫切除例3例の検討.第58回日本肺癌学会学術集会.横浜
  9. 解剖学的肺切除後症例に対する同側再手術の戦略.第58回日本肺癌学会学術集会.横浜
  10. 当科における術前呼吸器リハビリテーション介入の意義.第58回日本肺癌学会学術集会.横浜
  11. 術前化学放射線療法とPA elongation により肺全摘を回避し得た左肺門部肺癌の1例.第58回日本肺癌学会学術集会.横浜
  12. 当科における多発外傷に対する他科との合同手術の現状.第70回日本胸部外科学会定期学術集会.札幌
  13. 胸腔鏡下胸部交感神経遮断術:薬剤抵抗性冠攣縮性狭心症・カテコラミン誘発性心室頻拍に対する至適焼灼切離範囲の検討.第70回日本胸部外科学会定期学術集会.札幌
  14. 当科における単孔式胸腔鏡手術の治療成績.第70回日本胸部外科学会定期学術集会.札幌
  15. 当院における急性多房性膿胸に対する治療戦略~早期手術の有用性について~.第70回日本胸部外科学会定期学術集会.札幌
  16. 分葉不全症例に対するthoracoscopic fissureless lobectomyの有用性.第70回日本胸部外科学会定期学術集会.札幌
  17. 当科における高齢者気胸に対する治療戦略.第21回日本気胸・嚢胞性肺疾患学会総会.久留米
  18. 大腸原発転移性肺腫瘍切除例における予後因子の検討:病巣部位の検討.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  19. 右下葉解剖学的肺切除後に対する胸腔鏡下右上葉切除の手術戦略~再手術におけるVATSアプローチの位置付け.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  20. 左上葉区域切除後残存上葉切除の手術戦略.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  21. 導入照射化学療法後,上大静脈・左腕頭静脈合併切除置換術を要した胸腺癌の1切除例.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  22. 非腫瘍性肺疾患による喀血への治療戦略.第34回日本呼吸器外科学会総会.福岡
  23. 感染性空洞性肺疾患に対する一期的空洞切開,筋弁充填術の有用性.第117回日本外科学会定期学術集会.横浜
  24. 胸部悪性腫瘍におけるOncologic Emergency症例に対する治療戦略.第117回日本外科学会定期学術集会.横浜
  25. 当院における呼吸器外科・他科合同手術の現状.第117回日本外科学会定期学術集会.横浜
  26. 原発性肺癌術後1年以内再発例の臨床的検討.第117回日本外科学会定期学術集会.横浜
医学論文(主要な論文のみ掲載)
  1. Three-dimensional computed tomography helps identify muscles for use in an empyema cavity. Ann Thorac Surg. 2017
  2. Thoracoscopic right upper lobectomy after an initial anatomic pulmonary resection of the lower lobe. Multimed Man Cardiothorac Surg. 2017.
  3. A convenient method for identifying a small pulmonary nodule using a dyed swab and geometric mapping. J Thorac Dis. 2016
  4. Successful treatment of a bronchopleural fistula after en masse lobectomy. J Thorac Dis. 2016
  5. Pulmonary sequestration combined with an aberrant right subclavian artery. Ann Thorac Surg. 2013
  6. Anatomical segmentectomy for pneumothorax associated with congenital bronchial atresia. Eur J Cardiothorac Surg. 2013
  7. Concerning en masse lobectomy. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012
  8. Is a bronchopleural fistula a contraindication to pleurodesis? Ann Thorac Surg. Ann Thorac Surg. 2012
  9. Salvage surgery for local recurrence after carbon ion radiotherapy for patients with lung cancer. Eur J Cardiovasc Surg. 2015
  10. A useful technique for specimen extraction from the thorax: the vacuum-packing method. Eur J Cardiothorac Surg. 2012
  11. The indications for uniportal video-assisted thoracic surgery. Ann Thorac Surg. 2012
  12. The selected segmental inflation technique for pulmonary segmentectomy: Pros and cons. J Thorac Cardiovasc Surg. 2012
  13. A simple, new technique for identifying the cut line in the bronchus in bronchoplasty using a butterfly needle. Eur J Cardiothorac Surg. 2011
  14. Difference in outcome in the transection of the pulmonary artery and vein. J Thorac Cardiovasc Surg. 2011
  15. Three-dimensional imaging of an anomalous systemic artery supplying normal lung. Ann Thorac Surg. 2010
  16. Serial chest films are needed after a diagnosis of pneumopericardium because of risk of cardiac herniation. Ann Thorac Surg. 2010
  17. What is standard treatment for bronchopleural fistulas? Ann Thorac Surg. 2010
  18. Membranous tracheoplasty using an azygous vein pedicle graft with roundabout-field intubation: a novel surgical technique. J Thorac Cardiovasc Surg. 2009
  19. The blurred border between thoracoscopic surgery and thoracotomy. Ann Thorac Surg 2009
  20. Chilaiditi’s sign mimicking a traumatic diaphragmatic hernia. Ann Thorac Surg 2009
  21. Does the electric scalpel facilitate bronchial tissue damage? Eur J Cardiothorac Surg 2008
  22. Atypical bronchoplasty to preserve the lung parenchyma: the bronchofolding technique. J Thorac Cardiovasc Surg 2008
  23. Pleural metastases from renal cell carcinoma 16 years after resection. J Clin Oncol 2007
  24. Convenient and improved method to distinguish the intersegmental plane in pulmonary segmentectomy using a butterfly needle. Ann Thorac Surg 2007
  25. Blunt traumatic injury of the azygous vein diagnosed by computed tomography. Eur J Cardiothorac Surg 2007
  26. Does an incomplete interlobar fissure influence survival or recurrence in resected non-small-cell lung cancer? Lung Cancer 1999
  27. Resection of pulmonary metastases in six patients with disease-free interval greater than 10 years. Ann Thorac Surg 1998

(2018年5月22日 文責:上吉原)

外来スケジュール

 
午前 上吉原 光宏
(再診)
上吉原 光宏
(第2・4週)
井貝 仁
(初診・再診・第2・4週)
急患診察のみ 井貝 仁
(初診・再診)
上吉原 光宏
(初診)
井貝 仁
(初診・再診)
午後 上吉原 光宏
(初診・再診)
吉川 良平
(再診)
急患診察のみ 急患診察のみ   急患診察のみ

臨時休診日


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