泌尿器科で行っているロボット支援下手術

 わたしたち前橋赤十字病院泌尿科は低侵襲手術を心がけています。小さな傷で腎臓を摘出する手術からはじまり、2008年からは腹腔鏡手術を開始しました。腹腔鏡下腎摘除術、腹腔鏡下腎尿管摘除術、腹腔鏡下副腎摘除術、腹腔鏡下腎盂形成術、気膀胱下膀胱尿管逆流防止術と守備範囲を広げ、2019年からは腹腔鏡下前立腺摘除術を開始しました。

 腹腔鏡の手術では傷が小さくなるだけでなく、他の面でも患者さんの負担を少なくすることができるようになりました。

 腹腔鏡手術以前、開腹での前立腺摘除術や膀胱全摘術は輸血の準備が必要でした。そのため輸血による感染(肝炎、HIVなど)の合併症を起こさないために術前に血液を預からせていただき必要なときに入れる自己血輸血を採用していました。腹腔鏡の時代になって格段に出血は少なくなり、輸血をおこなうことはほぼなくなり自己血輸血の準備も不要になりました。

 そして低侵襲手術に欠くことのできない手術支援ロボット ダビンチサージカルシステムを導入しました。約半年間の準備の後、2022年6月より前立腺摘除術を開始しました。開腹術・腹腔鏡の経験も活かし、ダビンチでの手術を提供しています。

 高精細・立体視のできるモニターを駆使しての腹腔鏡手術は開腹手術に比べはるかにこまかい血管などをみながら手術をすすめることができます。さらにダビンチでは体内で手術操作をおこなう鉗子の先端が自由自在さまざまな方向に曲がり、しなやかに動くことで腹腔鏡手術以上の細やかな手術ができるようになりました。手術操作がいろいろな角度から行えるため血管などの組織に無理な力を加えずに剥離ができます。縫合も楽に正確に行えます。欠点としては操作の上で触覚がないことです。そのためロボットの強い力が無理な力とならないよう明瞭な視野での観察で触覚がないことをカバーしています。

 現在、わたしたちは前立腺摘除術を中心に、腎部分切除術(癌の部分を切除する手術)をダビンチで行っています。

 前立腺摘除術の入院は9日間ほど、腎部分切除術も同様です。

これら以外にダビンチを用いて保険診療として行える手術は副腎摘除術、腎摘除術、腎尿管摘除術、腎盂形成術、膀胱全摘術です。これらは現在腹腔鏡で手術を行っています。これらも徐々にダビンチ手術として提供できるように取り組んでまいります。

ダビンチ前立腺摘除術

 限局性前立腺癌に施行しています。
手術の前に脳動脈瘤がないこと、閉塞隅角緑内障がないことを合併症予防としてチェックします。
高リスク症例にはリンパ節も併せて摘出します。
入院期間は 平均9日程度です。
出血は 100-200mlほどで 輸血が必要になることはまれです。

ダビンチ腎部分切除術

腫瘍径4cm以下の腎細胞癌の患者に対して 癌の部分を切除します。
腫瘍の状況により腫瘍径5~6cmでも可能な場合があります。
腎摘出術に比べ腎機能の温存ができるため長い視点でみると生命予後に良いとされます。
腫瘍の位置により部分切除が難しいものもあり、術前検討を慎重に行っています。



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