当科では2022年6月より”手術支援ロボット・ダビンチ”を導入しております。2024年1月時点で通算130例以上、2023年は88例の患者様に対して同手術を施行しており、群馬県では最多並びに日本でもトップクラスの症例数となります。
手術支援ロボットダビンチ(図1-A, B)の特徴は、3Dモニターを用いた立体視と多関節鉗子による手術操作が挙げられます。これらによって、従来の胸腔鏡手術を大きく凌駕する繊細な手術が可能となりました。特に、肺癌手術におけるリンパ節郭清は特筆すべきものがあり、進行癌で徹底したリンパ節郭清が必要な症例に有用です。また、肺をより温存する肺区域切除では非常に繊細な末梢肺血管を処理する必要があるのですが、こちらに対しても非常に有用です。当科では上記ダビンチ手術以外にも呼吸器外科領域における低侵襲手術のトレンドである単孔式胸腔鏡手術も施行しておりますが、両手術それぞれに適した症例があるため、どちらの手術を施行するかについてカンファレンスで相談した後、患者様に提供しております。
図1-A
図1-B
次に、2023年1月から12月における、当科での周術期成績(いずれも中央値)を下記に示します。
肺葉切除術 (42件)
1 | 手術時間 | 140分 |
2 | コンソール時間 (術者がダビンチを操作している時間) | 86分 |
3 | 出血量 | 少量(測定困難) |
4 | 術後ドレナージ期間: | 1日 |
5 | 術後在院日数 | 2日 |
6 | 術後合併症(Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上) | 9.5% |
7 | 術後30日以内死亡 | 0% |
肺区域切除術(36件)
1 | 手術時間 | 123分 |
2 | コンソール時間 (術者がダビンチを操作している時間) | 86分 |
3 | 出血量 | 少量(測定困難) |
4 | 術後ドレナージ期間: | 0日 |
5 | 術後在院日数 | 2日 |
6 | 術後合併症(Clavien-Dindo分類GradeⅢ以上) | 2.8% |
7 | 術後30日以内死亡 | 0% |
上記で示したように、手術支援ロボットダビンチを用いることで、ほとんどの患者様に対して短時間の身体に負担をかけない手術ならびに早期退院を提供できております。
患者様が手術前の日常に1日でも早く戻れるような、また、「前橋赤十字病院の呼吸器外科で治療して良かった」と満足して頂けるような手術を、今後も当科スタッフ(図2)全員で提供していきたい所存です。肺のことでお困りの際には、一度、お気軽に当科を受診してみてください。
文責:前橋赤十字病院 第二呼吸器外科部長 井貝 仁