産婦人科
Obstetrics and Gynaecology

特 色

平成14年6月から腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術を積極的に取り入れるようになりました。 現在では、周辺地域のみならず県外からも腹腔鏡下、子宮鏡下手術の紹介を多く受け入れています。実施に際しては、安全を最優先として、適応 (病気、程度がその手術に適しているかどうか)について、十分に検討してから決めます。 産科婦人科腹腔鏡、子宮鏡下手術については、当院においては、どの手術も多数例の経験がありますが、子宮内膜症の手術例数は、全国的にも有数 の症例数になっています。なかでも慢性骨盤痛(月経でもないのに月経の時のような痛みを感じる)に対する子宮内膜症病巣除去術は、当院独自の もので、高い有効率をあげています。クリニカルパスを早期から導入しており、腹腔鏡下、子宮鏡下手術にはこれをほぼ全例に適用しています。 卵巣癌の治療は、厚生省の定める特定疾患の年間治療数を越える症例の手術と、必要に応じて抗がん剤治療を行っています。また子宮癌について は、当院放射線科と共同でセンチネルリンパ節を検出する試みを平成14年から開始し、必要かつ十分な広範囲の切除を行いつつ、将来に向けてよ り低侵襲の手術が可能になるよう新たな知見を重ねつつあります。同じく放射線科により放射線治療も行っています。 現在 産婦人科医師 常勤専攻医を募集しております。産婦人科専門医の資格を得るための研修施設としての認定を受けております。また、産婦人 科内視鏡認定医が2名おり、その認定を得るための指導を行なっております。

子宮外妊娠について

子宮外妊娠(外妊)は、通常の妊娠と異なり、卵管などに妊娠が成立する病気で、放置すれば母体の命にも関わる事態となりえます。一般的には 100例の妊娠に1例程度の頻度で発生します。当院においては、他院からの紹介が多いので、年間30例程度の症例があります。 外妊の治療で最も顕著なことは、治療時の妊娠週数が若ければ若いほど、治療が安全に容易く済むということです。できれば妊娠6週未満が望まし いのです。それがどれくらいの時期かというと、妊娠に気づいたときにはすでに6週程度のことも多いのです。(下記参照)
妊娠6週とは、下の3つのどれかにあてはる時を指します(28日周期)

  1. 最終月経から6週間たった時
  2. 排卵日から4週たった時
  3. 来るべき月経がこなかった日から数えて2週間経った時

妊娠した、ということで受診すると、通常、超音波検査で子宮内に胎嚢が見えるかどうかを確かめます。早いときには妊娠4週2日(予定月経の 2後)くらいから胎嚢が見えます。しかも見え始めると、一日毎に1mm程度大きくなってゆきます。したがって妊娠が確実(月経が遅れていて、 尿妊娠反応陽性)で初診時に胎嚢が見えなかったとしても、じきに2・3日たてば見えてくると予測できます。もし見えてこないとするなら、何ら かの異常(胎児発育の遅れ、妊娠週数の勘違いなど)を考えなければなりません。子宮外妊娠もそのなかに含まれます。したがって当院では、正常 の位置に妊娠が確認できないとき、すなわち子宮のなかに妊娠していることが確認できない場合には、最低でも週2~3回は受診していただくよう にして、万一の外妊をできる限り早く見つけるように心がけています。ここで重要なのは、超音波診断です。現在では、予定日を決めるのに胎嚢の 大きさや、胎児の大きさによって決めることが多くなっていますので、現代の超音波診断装置には、妊娠週数の診断のためのデータや、胎児の推定 体重などのデータが内蔵されています。しかしこの内蔵されたデータの、殊に妊娠のごく初期については、現実に即したデータが使われていない超 音波診断装置が多いのが問題です。先に妊娠4週2日で胎嚢が見えることがあると書きましたが、一般的に使われている超音波診断装置に内蔵され たデータによると、「妊娠5週を越えてからようやく胎嚢が見えるということにしている」ものが多いようです。これが子宮外妊娠の診断の遅れに 結びつく可能性があります。
たとえば、妊娠5週と考えられる時期に受診した場合、正常の妊娠であれば、胎嚢が見えるほうが普通のはずです。しかし上記のような超音波診断 装置が使われた場合、それを医師が信用するとすれば、その時期に胎嚢が見えなくても「正常」と判断されてしまいます。さらに「次の受診は2週 間後」ということにでもなるとすると、正常妊娠なら問題は何もおこらないでしょう。しかし、もし子宮外妊娠だったとすると、その2週間のうち に、卵管の妊娠が破裂して腹腔内に大出血し、出血性ショックに陥る、という恐ろしい事態になるかもしれないのです。
しかし、このような場合でも、2~3日後に診察を受け、子宮内に妊娠していることが確かめられれば、安心です。しかしそれでも胎嚢が見えなけ れば、子宮外妊娠の可能性が高くなります。場合によっては、診断的な腹腔鏡にふみきることも求められます。その際、妊娠週数は、まだ5週にと どくかどうかの時期であれば、破裂している可能性は極めて低く、そのまま腹腔鏡下手術により、手際よく治療することができるでしょう。
子宮外妊娠の腹腔鏡下手術には、全身麻酔と、早い場合で20分程度の手術時間を要します。妊卵を体外に回収するのを容易にするため、左右どち らかの下腹部に10~12mmのポートを導入します。他には臍に5mmの観察用のポートと対側の下腹部に5mmのポートを導入します。

子宮内膜症と慢性骨盤痛について

従来、治療の難しいものとして見捨てられてきた慢性骨盤痛の治療と、子宮内膜症、チョコレート嚢胞の手術に力を入れております。これらは技 術的には困難なものとされております。当院においては、安全性を最優先としつつ、臍と左右下腹部の計3カ所にそれぞれ5mm径のポート(内視 鏡や鋏、鉗子などを通す管)を導入して行っております。卵巣チョコレート嚢胞を合併している時も同様に行なわれます。

子宮腺筋症について

子宮の壁のなかに子宮内膜症と同等のものが発生し、壁が厚くなる疾患で、激しい月経困難症と、過多月経を来します。薬物療法を含み、さまざ まな治療法が試みられ、当院にてもマイクロウエーブを用いる方法などが試みられましたが、決定的な治療法とはならないようでした。治療後の妊 娠維持に関しても、世界的に治療経験が不足しているようです。これまでの方法のうちでは、核出できるようなら腺筋症を核出することが最も効果 があると考えられます。当院においては、十分なインフォームドコンセントの上で、子宮腺筋症の核出術(腹腔鏡下手術、あるいは開腹手術)を 行っております。

レゼクトスコピー、子宮筋腫、子宮動脈塞栓術について

子宮内に突出する筋腫(粘膜下筋腫)を子宮腔鏡下手術(レゼクトスコピー)で治療しています。この手術は、やや熟練を要し、子宮壁穿孔など の合併症が多発するとされるため、この手術を恒常的に行なっている施設は全国的にもかなり少ないとされています。当院では安全性を最優先とし つつ、この方法に適しているかどうか慎重に判断し、必要に応じて腹腔鏡下子宮筋腫核出術とレゼクトスコピーを使い分けて行っています。 子宮筋腫の治療として、近年、子宮動脈塞栓術が注目されております。この方法は筋腫を小さくする効果はあるものの、正常の子宮や、子宮内膜も 萎縮するとされておりますので、今後妊娠を希望する場合には行いません。また痛みが数日あること、子宮壊死などの合併症なども指摘されてお り、当院としては子宮筋腫に対する治療法としては、積極的にお勧めする事はしておりません。当院では子宮癌の治療の一つの方法として行ってき ており、筋腫においては、その他の治療が適さないと判断されるときなどで、例外的に行っております。(放射線科の専門の医師が行います。) 実際にはレゼクトスコピー、腹腔鏡下筋腫核出術などを含む、塞栓術以外の治療法が、十分機能しているのが現状です。腹腔鏡下子宮筋腫核出術 TLM(臍 左右下腹部の3カ所、下腹部の一方は12mm)のほか、腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術LAM(臍 左右下腹部の3箇所と、恥骨上数 cmの横切開)、開腹による筋腫核出術(LAMに準じて切開創を小さいまま行なうことが多い)を、適応に応じて使い分けています。

卵巣皮様嚢腫について

若年者に多発する、最もありふれた卵巣腫瘍で、脂肪、毛髪、歯などを含んでいます。この腫瘍は、放置していても自然に小さくなることはな く、年月とともに次第に大きくなり、時に同時期ないし年をまたいで両側に発生します。捻れて強い腹痛(茎捻転)を起こして緊急手術を必要とす ることもあれば、少ないながらも悪性の部分を含んでいる場合もあります。 通常は、臍と左右下腹部の3カ所(左右下腹部のどちらかは10mm~12mm)のポートで行います。当院において、早期に定型的な方法(手術 手順がほとんど決まっていて、突発的な事が起きにくい)を決める事ができた疾患です。その結果として、現在、手術時間が短縮されつつありま す。この手術について検討した結果、7cmに達しているもので手術時間が長くなる傾向がありました。つまり7cmを越えるくらいから、手術が 難しくなる、ということを意味しています。 したがって、皮様嚢腫は、発見されたら、できる限り早めに診断を確かめ(MRIが有力な診断根拠となります)、大きくなるのを待たないうちに 手術するのがよいと思われます。通常は、臍、左右下腹部の3カ所のポート(左右のどちらかは10~12mm、他は5mm)で行います。

子宮全摘術について

こ ちらをご覧ください

ス タッフ紹介

名前 卒年 職名 専門分野 資格
曽田 雅之 1987年 副院長兼部長 更年期・周産期医療・閉経後骨粗鬆症・ ホルモン補充療法
日本産科婦人科学会専門医
日本女性医学学会認定医
日本臨床倫理学会上級臨床倫理認定士
日本女性医学学会女性ヘルスケア暫定指導医
母体保護法指定医
産婦人科指導医
臨床研修指導医
村田 知美 1996年 部長 産婦人科一般
日本産科婦人科学会専門医
満下 淳地 1993年 副部長 産婦人科一般
日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医
内視鏡外科学会技術認定医
がん治療認定医
臨床細胞学会細胞診専門医
産科婦人科学会専門医
産科婦人科学会指導医
臨床研修指導医
医学博士
萬歳 千秋 2002年 副部長 産婦人科腫瘍
日本産科婦人科学会専門医
細胞診専門医
母体保護法指定医
臨床研修指導医
松本 晃菜 2015年 医師 産婦人科一般
日本産婦人科学会専門医
茂木 絵美 2005年 嘱託医師 産婦人科一般