小児科専門医研修のすすめ

 皆さん、前橋赤十字病院の小児科専門医研修に興味を持っていただいてありがとうございます。私は平成4(1992)年卒の小児科医です。私の学生時代でさえ子供の数が減っているから小児科医は将来性がないと言われていました。それは少子化については当てはまっています。でも令和となった今日でも小児科医は余っていて不要だということはどこに行っても聞きません。小児を取り巻く環境は変化し、新たな問題が発生しています。そのため、小児科医は今も不足しています。医療が必要な子どもたちはいなくなることはありませんし、子どもたちこそ十分な医療を受ける権利があると考えます。

 私たち小児科医は当然のこととして子どもに対して医療をおこなっています。子どもたちは小さな体に大きな力を秘めています。子どもの病気のおそらく大部分は子どもたち自身の生きる力で回復しています。私たちはその生きる力を十分に発揮できるように支えているのだと思います。病気を治してあげているなどというふうに傲慢になってはいけません。私たちは、子どもたちが生きてゆく上で進むべき道をそれないないように、ほんの少しの手助け、ほんの少しの軌道修正をしているのです。

 私たちが診療をしている子どもたちには未来があります。退院してゆく子どもたちは、幼いころに重い病気をしたことを感じないまま、これからきっと楽しい人生をおくってくれるでしょう。今年生まれた子どもの多くが西暦2101年を超えて生きているはずです。22世紀というと信じられないくらい先の未来ですが、私たち小児科医が日々診療している患者さんの多くは22世紀を生きる人たちだということになります。

 私自身、最近になってますます小児科医を続けていてよかった、子どもたちのことがとても可愛いと思うようになりました。小児科医になったころは医師としての責任ばかりが重く、そのような感情にはなれなかったのだと思います。自分が診療していた子どもたちが育ち、大きくなり、生意気な口をきくようになり、大人になり、結婚し子供ができて、親になってゆく。このような経験を皆さんにもしていただきたいと思っています。