心臓病・血管病への取り組み
前橋赤十字病院 心臓血管内科が日頃行っている、心臓病と血管病への取り組みについて記載しました。これから も、当科への要望、ご意見ありましたら、遠慮なくご連絡いただければと思います。
その① 心臓救急への取り組み
心臓疾患は、急性心筋梗塞、急性冠症候群、急性心不全などの病名からわかるとおり、突然発症し時間とともに予後 (経過や治療成績)が悪化していく疾患が多いです。一刻も早く的確な診断と治療が必要とされます。救急車搬入の依頼時があったときに院内の ベッドに空床があるかどうか確認していては間に合わなくなることもあるため、当院では、救命センター、ICUが満床の時でも胸痛の患者さんを 受け入れることにしています。また救急隊との連携、相互理解、疾患への共通認識が行えるよう、年2回心臓救急カンファレンスを当院で開催して います。
その② 治療までの時間短縮と重症例への対処に取り組んでいます。
急性心臓疾患では,1分でも早く治療を開始したい状態であることが多いため,心臓血管内科では,当科の医師が 365日当直を行っています。連日当直することで20分の短縮が出来ました。搬送中,搬送後の心肺停止状態に対して,適応があれば救命,予後 改善を目標に人工心肺(VA-ECMO),心臓補助装置(IABP),脳を守るための低体温療法を施行しています。その原因疾患に対して,冠 動脈形成術(PCI),緊急心臓外科的手術など積極的に治療行っています。また日ごろ当院心臓血管外科医師とのカンファレンスを通して適応の ある患者さんについては緊急手術も含め外科的手術がよりよい結果になると予想された場合は,提案させていただいています。新病院では,手術室 も増加したため緊急手術にも対応しやすくなっています。
その③ 失神センターを開設し,一過性意識消失の診断と治療に積極的に取り組んでいます。
当院は救急病院であることから、意識消失、失神、心肺停止の方の搬送が年間200名を超えます。不整脈が原因で ある場合は適切な治療を行うことにより再発予防が可能となります。電気生理学的検査、冠動脈攣縮負荷試験、エピネフリンやサンリズムによる薬 物負荷試験、心室頻拍誘発試験、そして複数回の失神に対しては、ICM(植え込み型心電図モニターによる心電図記録(約3年間心電図が記録で きます)による診断を行っています。
その④ 致死性不整脈診断治療への取り組み
失神、心肺停止で救急搬送された患者さんで致死性不整脈(心室細動、心室頻拍、Torsade de pointes、ブルガダ症候群)などが確認された場合は、体内植え込み型除細動器(ICD)で対処します。
その⑤ 心不全に取り組んでいます
心不全患者は、年間200名以上が入院します。原因はさまざまで心疾患の進行とともに増加します。原因が分かれ ば治療法も変わることがあり、的確な治療により心不全再発を防ぐことができることもあります。弁膜症、虚血心疾患による心不全は患者さんの状 況、心臓の状態から総合的に判断して外科的手術、カテーテル治療、内科的治療をそれぞれ選択しています。適応のある患者さんには心臓再同期療 法(CRT)という心不全の予後を改善するペースメーカーの植え込みを行うことができます。
その⑥ 透析で使用するシャントの狭窄・不全治療に取り組んでいます
心臓血管内科医師の冠動脈PCIの技術を駆使して、シャントの狭窄・亜閉塞に対してカテーテル治療を行います。 再狭窄率は10%程度であり,極力シャントを長持ちさせるよう努力しています。
その⑦ 患者さん(患者さんのご家族)と協力関係を基本として,病気と向かい合います
循環器系の病気は動脈硬化,老化がベースとなっていたり,先天性の場合や,糖尿病・高血圧などの習慣病から発症 していることが多く,その場合,病気と長く付き合っていく必要があります。私達は心臓血管内科医として,患者さんの協力のもと,心臓病・血管 病に対して、守備範囲を広く、積極的に取り組み、より良好な状態にすべく,患者さんと一緒に努力していきたいと思っています。